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2009 年度 実績報告書

沈み込みプレート境界における蛇紋岩の存在形態とその流動特性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 09J08592
研究機関広島大学

研究代表者

平内 健一  広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)

キーワード蛇紋岩 / 沈み込み帯 / 地震波異方性
研究概要

小笠原弧大町海山西縁の断層崖において採取されたアンチゴライト蛇紋岩の構造解析と結晶方位の測定を行った.その結果,蛇紋岩には塊状~片状の産状をもつことがわかり,塊状の試料にはアンチゴライトが不規則に発達し,剪断方向とは無関係な比較的強い異方性をもつことがわかった.片状の試料にはアンチゴライトの形態定向配列が発達し,剪断面に沿ったアンチゴライトの(001)面の配列が認められた.片状試料の異方性は塊状試料の3倍大きく,かんらん岩と比較して約1桁ほど大きい.この結果は,Katayama et al.(2009)と調和的であることから,沈み込み帯で認められる海溝に平行な強い地震波異方性は,沈み込むスラブに平行で,マントルウェッジ最下部に存在すると予想されるアンチゴライト粒子の配列によって説明できることを示唆する.
次に,かんらん石と低温型・高温型蛇紋石の3種類の岩石を用いて,沈み込み帯のマントルウェッジに対応する温度圧力条件下で2相系の単純剪断変形実験を行った.実験は,広島大学所有の固体圧式変形試験機を用いて行い,温度300,500℃,封圧1GPa,定歪速度下で行った.その結果,低温型蛇紋石とかんらん石には約1桁の粘性率比があるが,高温型蛇紋石とかんらん石にはわずかに1~3倍の粘性率比しか存在しないことがわかった.このことは,沈み込み帯におけるプレート間カップリングの程度は,マントルウェッジ基底部に存在する蛇紋石種によって大きく変化することを意味する.つまり,冷たいスラブが沈み込む東北日本では,マントルウェッジ基底部に存在する低温型蛇紋石が両プレート内での強いデカップリングを引き起こすと考えられるが,暖かいスラブが沈み込む西南日本では,高温型蛇紋石とかんらん石の間に粘性率比がほとんどないため,弱いデカップリングしか引き起こさないと考えられる.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] マントルウェッジ条件下での蛇紋岩の流動特性に関する実験的研究2010

    • 著者名/発表者名
      平内健一・片山郁夫
    • 雑誌名

      月刊地球 32

      ページ: 167-171

  • [雑誌論文] 関東山地黒瀬川帯の蛇紋岩は深さ50kmのマントルウェッジから上昇した2010

    • 著者名/発表者名
      神谷眞一郎・平内健一・小林洋二
    • 雑誌名

      月刊地球 32

      ページ: 147-150

  • [雑誌論文] Trench-parallel anisotropy produced by serpentine deformation in the hydrated mantlewedge2009

    • 著者名/発表者名
      Ikuo Katayama, Ken-ichi Hirauchi, Katsuyoshi Michibayashi, Jun-ichi Ando
    • 雑誌名

      Nature 32

      ページ: 147-150

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The early Cretaceous in situ shallow-marine carbonates containing typical Tethyan biotain the Ishido Formation, Kanto Mountains, central Japan2009

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Iba, Ken-ichi Hirauchi
    • 雑誌名

      地質学雑誌 115

      ページ: V-VI

    • 査読あり
  • [学会発表] 高温型蛇紋石の相対強度実験2009

    • 著者名/発表者名
      平内健一・片山郁夫
    • 学会等名
      日本地質学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      2009-09-04
  • [学会発表] 地震発生帯の下限は低温型蛇紋石の存在によって規定されるか?2009

    • 著者名/発表者名
      平内健一・片山郁夫
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2009-05-19
  • [学会発表] 伊豆・小笠原弧大町海山から採取された蛇紋岩の微細組織解析:YK08-05航海の成果2009

    • 著者名/発表者名
      平内健一・植田勇人・臼杵直・Martin Meschede, 新井田清信・Yk08-05研究者一同
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2009-05-18

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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