研究課題
1.熱膨張測定技術の改良これまで、圧力下におけるほぼ唯一の熱膨張測定法である、ストレインゲージ素子による熱膨張測定においては、測定方法の本質的な問題から、温度や磁場変化の影響で精度が低下する問題が残されていた。本年度の研究では、この問題の解決方法としてケルビンブリッジ法を提案した。また、本方法を周知し科学研究に貢献するため、国際学会において発表を行い、論文としてまとめた。この方法は強相関電子系で注目されつつある圧力下熱膨張測定の、新たな標準方法となるべきものである。2.弱い遍歴強磁性体ZrZn2における新奇現象複数の臨界現象が交わる多重臨界現象は、それ自体が興味ある物理であり、理論的にも実験的にも注目を集めている。遍歴強磁性体においてたびたび観測される三重臨界現象も多重臨界現象の一つであるが、これが遍歴電子強磁性体における共通の特徴であるか否かは定かではなく、興味ある問題の一つである。本年度の研究では、弱い遍歴強磁性体として知られる物質、ZrZn_2において、熱膨張および磁化率測定による三重臨界点の研究を進めた。その結果、強磁性が不安定となる圧力近傍で、これまで観測されたことのない新奇現象を見出した。この現象は、現在のところ反強磁性的なものであると考えられ、また、フェルミ面のトポロジー変化と関係した新しいタイプの相転移の可能性を秘めている。これはZrZn_2のみならず、多くの弱い遍歴強磁性体において問題となっている三重臨界もしくは量子臨界現象に関連したものであると考えられ、これらの物質でこれまで謎とされてきた問題の解となると思われる。現在は論文を纏めつつ、不足している結果を補っている段階であり、来年度中に結果を纏めた上で発表予定である。
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Journal of the Physical Society of Japan(JPSJ), Supplement
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