Yakir Aharonovらによって提唱されたWeak Valueという概念の基本的な数学構造を調べた。まず、Density Operatorの枠組みと同じ枠組みで捕らえなおすために、受け入れ研究者の細谷暁夫と共にWoperatorという概念を導入しその性質を調べ、Decoherenceのある系でのWeak Valueを定義することに成功した。量子力学における確率の意味づけに関する問題に出くわし、その数学的性質からStrange Weak Valueに関する知見を見出した。また、その関連で量子力学における確率過程を定義するためにQuantum Walkに対する研究を行った。まず、Quantum WalkとWeak Valueにおける確率の見方との対応関係を調べた。次に、横浜国立大学生産工学科の今野グループと共にEnvironmentのあるようなQuantum Walkについての数学的性質を調べ、それらを量子論の基礎問題への応用を考えた。また、UCSBのPDである桂博士と共にIncommensurate environmentの系におけるQuantum Walkについても調べ、その双対性について性質を調べた。そして、時間作用素に対する理論を深める意味で、岡山大学数学科の廣川グループと共に半直線系での量子位相に関する研究も行った。トンネル効果による量子位相がAharonov-Bohm位相を制御することにより、実験的に観測可能になるということを示した。また、7月末からマサチューセッツ工科大学機械工学科量子情報グループにて研究を始め、時間に対する量子力学に関して、いくつかの共同研究を進めている最中である。一つは、PreselectionとPostselectionを使うというTwo State Vector Formalismに似たSpin Network表示上でClosed Timelike Curve上での量子力学を議論し、実験的に実現できるということを示した。マサチューセッツ工科大学での一連の共同研究では、時間とエネルギーに関するトレードオフ関係を理解する上で重要な仕事となることが予想される。
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