研究課題
本年度の成果は、大きく2つ存在する。一つ目は古典系と量子系との間の時間に対する対応を調べた離散時間量子ウォークの研究である。これは、デコヒーレンスのメカニズムを調べた研究を筆頭に、離散時間量子ウォークとアンダーソン局在に関連した局在化に関する議論を深めた研究やロスがあるリング上での多体系での生存確率を古典系と量子系で数値的にも解析的に比較した研究を行った。これにより、古典系での時間発展と量子系での時間発展には違いがあるということが分かり、これを実際の実験で実現させることによって、古典系と量子系の間に存在する時間に関するパラメータを議論するための素地となる研究が行えたと思われる。二つ目は、量子力学の中での系での時間のパラメータを議論するために、ハーディーが1992年に提唱した電子と陽電子を使った干渉計でのパラドキシカルな現象を元に、Weak Valueを用いて実験的にこのパラドキシカルな現象が近年説明されたのだが、その理論的根拠を与えることに成功し、干渉計での1電子のパスというものに対して反事実的に解釈することとそれを定量的に扱うことに成功した。この研究とは独立で始まった研究ではあるが、最終的には関連する研究として、訪問していたマサチューセッツ工科大学の同僚および実験に関してはトロント大学のグループと共同で量子力学系の中で時間的閉曲線をどのような形で実現させればよいかという問題を取り扱い、その成果として実際には時間的閉曲線をうむような状況ではないだが、時間的閉曲線があったと解釈できるセッティングをポストセレクションというテクニックを駆使して実現した。これにより、更に量子力学系の中での時間に関して、測定をするという行為とポストセレクションをしてから遡って時間の流れを解釈をするという研究に貢献したと考えられる。
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