研究概要 |
三畳-ジュラ系遠洋性層状チャートの堆積リズムがミランコビッチサイクルと呼ばれる地球軌道要素変動に伴う日射量分布変動を反映した事を明らかにした(Ikeda et al., 2010a EPSL : Ikeda et al., 2010b ESF).さらに,この堆積リズムを年代目盛としてサイクル層序を構築すると共に,長周期日射量変動と古環境変動,生物多様性変動との関連性の検討,およびその日射量変動の周期変調から太陽系惑星運動のカオス的挙動の意義について研究している.特に本年は,サイクル層序学的手法をペルム紀末大量絶滅からの回復過程にあたる下部三畳系に適用した.この時代は,堆積物中のシリカの割合が減少するため,Chert Gapと呼ばれていた.しかし,炭素同位体比-化石層序により年代層序を確立した結果,下部三畳系の堆積速度は増加しており(Sakuma et al., Island arc in review),さらに,サイクル層序の結果,シリカ堆積速度は増加していたが,陸源砕屑物堆積速度がさらに増加していたため,見かけのシリカの割合が減少したに過ぎなかったということを明らかにした. また,ミランコビッチサイクルが層状チャートの堆積リズムに反映されたメカニズムとして,夏モンスーンがミランコビッチサイクルを増幅させたとするメガモンスーン仮説を立てた.この仮説を検証すべくチャート・頁岩単層単位で連続的な化学分析を行うと供に,コロンビア大学Lamont-Doherty地球観測研究所のPaul Olsen教授と共同研究で層状チャートの堆積リズムと同時代の北米Newark超層群湖成層の湖水位変動と比較した.その結果,チャートは頁岩より化学風化度が高く,湿潤環境で堆積していたと考えられ,またチャートが厚い時期に湖の水位が高くなる傾向が見られた.これらの結果は,メガモンスーン仮説と調和的であった.
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