研究概要 |
当該年度は本研究の目的である,HuH-7細胞株以外で効率良くHCV RNAの複製が起こる新たなヒト肝細胞株を発見して、HCV RNA複製細胞株を樹立することができた。まず、HuH-7細胞系で見出した適応変異を組み合わせたHCVレプリコンRNAをHuH-7細胞以外のヒト肝細胞株(肝癌細胞株および不死化細胞株,HepG2,PH5CH8,Li23等)へ導入して、肝癌細胞株Li23がHCVレプリコンRNAの複製を許容する細胞であることを見出した。得られたレプリコン複製細胞をインターフェロンで処理して、細胞内のレプリコンを排除した治癒細胞を作製した。上述の適応変異を導入した全長HCV RNAを作製後、治癒細胞に導入して全長HCVゲノム複製細胞株を樹立した。同様の手法を用いることにより、薬剤の定量的活性評価を簡便に行えるレポーターアッセイ系も開発した。マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析により、得られたクローン化細胞がHuH-7細胞由来ではなくLi23細胞由来であることを確かめた。樹立したクローン化細胞内で複製しているHCVゲノムの塩基配列を決定したところ、上述の適応変異以外の新たな変異が検出されなかつたことより、Li23細胞においてもHuH-7細胞で見出された適応変異が有効であることがわかった。これまで世界中で樹立されたHCV RNA複製細胞は「全て肝癌細胞株であるHuH-7由来のクローン化細胞」であり、発表された研究成果がHCV生活環の本来の姿を反映していない可能性があった。当該年度の成果により、新たに見出された肝癌細胞株Li23由来のHCV RNA複製細胞と従来使用されてきたHuH-7細胞系を比較することが可能となり、HCV生活環をより正確に研究できるようになつたことは、新規抗HCV剤の発見やワクチンの開発も含め多方面のHCV研究において多大な貢献が期待でき意義ある成果である。
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