研究概要 |
本研究では下部マントル(>24万気圧)のレオロジー解明に向けた高圧実験を主とした研究を行う。下部マントルは主に(Mg,Fe)SiO3-ペロブスカイト(以下Pv)とフェロペリクレース((Mg,Fe)O)(以下Fp)で構成されており、二つの鉱物間の粘性差は2ケタ程度あると考えられている。しかしながら、それぞれの鉱物の粘性は実験的に確かめられていないうえに、どちらの鉱物が支配的になるかはわかっていない。そこで、高圧下での物性を調べるために本研究では以下の4点について実験を行った。 (1)アナログ物質であるMn2GeO4の高圧相平衡実験:MnGeO3は比較的低圧力(12万気圧)で下部マントル鉱物であるペロブスカイト構造をとることが知られている。また、Mn2GeO4は下部マントル条件では下部マントルと同じ結晶構造の組み合わせを持つことが報告されており、良いアナログ物質になることが期待された。しかしながら、本研究によって、12~20万気圧では下部マントルと異なる結晶構造を持つことが分かり、アナログ物質として適さないことが分かった。 (2)下部マントル条件での変形実験を行うための実験の立ち上げ:下部マントルは主にPvとFpで構成されており、どちらの鉱物が粘性を支配するかはまだ知られていない。そこで、本研究ではどちらの鉱物が粘性を支配するかを確かめるための実験を行うことを目指している。本年度では変形実験を行うための実験装置の圧力較正を行った。その結果、下部マントル条件(24万気圧,1600℃)を達成した。 (3)分子動力学法(MDシミュレーション)を用いたMgOの格子拡散係数の温度圧力依存性:下部マントルではMgに富むFpが粘性を支配する可能性がある。その際、格子拡散係数は非常に重要なパラメータとなる。本研究では、これまで実験で求められている値の再現を行った。 (4)放射光(Spring-8)を用いたγ-Fe-Ni合金の熱弾性特性:Fe-Ni合金は特異な熱膨張率を持つことで知られている。そこで、本研究では高温高圧(<25万気圧,1600℃)下での熱弾性特性を決定し下た。
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