平成21年度の本研究では、紛争後・移行期の国々における警察改革支援について、特に事例として扱うケニアとシエラレオネにおける警察改革支援に関する情報収集に大半の時間を費やすこととなった。第1に、2002年に政権交代が起きたケニアにおいて2003年から始まった警察改革支援について整理した。その成果が国際開発学会で行った報告である。第二に、2008年の選挙結果を起因とする暴動後以降、ケニアにおいて進められている警察改革の実態を把握するために3週間の実地調査を行った。この成果が平成22年春に予定している日本アフリカ学会での報告である。第3に、1990年代後半から2005年にかけてシエラレオネにおいて主体的に警察改革に携わっていた実務家を探しあて、インタビューを実施した。この成果は平成22年春に日本平和学会にて報告する予定である。また、シエラレオネに関しては、平成22年度に公刊される編著本にも掲載される予定である。平成21年度の本研究では、事例に関して整理すると同時に、理論枠組みの精緻化作業にも取り組んだ。その試みの一歩として警察改革支援に関する先行研究を整理したものが広島大学平和科学研究センター研究報告シリーズに掲載された論文である。事例や政策について整理する中で、警察改革支援に関する理解を深めることができたが、そこで明らかにすることができたのは、国際社会が意図して提供している支援(例:警察改革支援)と被支援者が目の当たりにする日々日常の間にギャップが存在しているということであった。
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