研究概要 |
1.理論モデルによる解析 本研究で対象としている,量子構造によるキャリアの熱緩和過程制御を行う量子構造を有するレーザデバイスに関して,これまでの研究で得た知見から,従来検討していたトンネル注入型の量子構造ではなく,井戸上部の波動関数を制御するような従来量子井戸に近い構造であるWell-in-Well(WWell)構造を提案して,その性能や構造依存性に関して構築してきた理論モデルを利用して解析を行った.その結果WWell構造では従来構造に比較して最大で1桁程度緩和速度を高速化することが可能であり,変調速度も40GHzを超えるような構造が製作しうることを計算結果として示した.また,従来の理論解析においても,実際に報告されている実験結果との比較を通じて結果の校正を行い,四人制度の高い計算手法の導入を行った結果,実験結果とうまく整合するような計算結果を得ることに成功し,計算手法の精度向上を実現した. 2.MBE法による結晶成長条件の探索・提案構造のレーザデバイス作製 提案構造の組成,膜厚において良好な結晶を得るため,分子線エピタキシー法を用いて結晶の成長及び評価を行うことによって,本装置における良好な基本的結晶成長条件の導出,また,トンネル注入量子井戸構造の成長に適した各種条件を導出した.結晶性の評価はPL,X線回折などにより行った.また,得られた結晶を用いてリッジレーザを製作し,室温下においてCW発振を実現し,静的な諸特性の測定を行った.得られたサンプルは一般的な性能のレーザと遜色の無い静特性を示しており,今後の動特性測定へ向け先鞭をつけることができた.
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