研究概要 |
1.まず,本研究の対象となる保護者・地域住民参加型参加型学校経営の機能評価をするための基礎作業として,英米における学校-保護者関係論に関する実証研究を収集・レビューし,理論的な視座の構築に努めた。その結果,学校-保護者関係の態様に関するドミナント言説としてのパートナーシップ論の存在を示し,それへの批判を(1)「研究方法上の批判」,(2)「格差の観点からの批判」,(3)「葛藤・統制・権力の観点からの批判」の3つが輻輳的に提起されていることを明らかにした。特に,(3)に示した「葛藤」の問題は,学校ガバナンスに多様なアクターが参入することで一層深刻になる可能性を孕むと同時に,学校レベルの参加ではアクター間の対立がともすれば顕在化せず,特定のアクターが別のアクターを抑圧するより洗練された統制・権力として機能しうる点に実証上の論点があるとした。この成果は雑誌論文として公表した。/2.実証研究については,保護者・地域住民参加型参加型学校経営の先進事例として,地域運営学校(学校運営協議会設置校)6校を訪問調査し,うち2校については計30回にわたるフィールドワークを行った。これらを通じて,学校ガバナンス機関に参加するアクターの中に,積極的に意思決定に関与する「活性層」と形式的な参加に留まる「非活性層」が存在すること,その分枝にアクター自身の階層・ジェンダーといった属人的要因が影響を与えているという英米と相同的な現象が見いだせるとともに,ガバナンス機関内での人間関係のダイナミズムがこの二層の生成・拡大における重要な契機となることを示し,保護者・地域住民参加型学校経営を関係論的に捉える必要性を提起した。これは,学会誌に投稿し,掲載が決定している。
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