研究課題
半導体半金属混晶の一つ、GaAsBiの禁制帯幅は、小さい温度依存性を有することが実証されている。本研究では、Bi系III-V族半導体半金属混晶のこの特性を活用して発振波長が温度に依存しない光通信用半導体レーザを得ることを最終目的としている。GaAsByGaAs薄膜におけるレーザ発振と、その発振波長が小さい温度依存性を有することは光励起法により平成21年度に確認したが、現時点では発振しきい値が一般的な半導体レーザのものよりもはるかに大きいことがわかっている。この要因としてGaAsBiとGaAsの伝導帯オフセットがほぼ平坦で、電子が活性層であるGaAsBiに充分に閉じ込められないことが考えられる。電子の閉じ込めに充分な伝導帯オフセットを形成する方法の一つに、GaAsBiにIh原子を添加し、InGaAsBi/GaAsヘテロ構造を形成することが考えられる。しかし、Bi原子とIn原子はInGaAsBi層内で表面偏析をする懸念があった。そこで当該年度は、InGaAsBi/GaAs多重量子井戸(MQW)の構造評価を行い、BiとInの表面偏析の度合いを調べた。InGaAsBi/GaAsMQWは、分子線エピタキシー法を用いてGaAs(001)基板上に350℃で成長した。成長後に、X線回折、二次イオン質量分析および断面透過電子顕微鏡観察を用いて本MQWの構造評価を行った結果、MQW層内にInやBiの極端な表面偏析は確認されず、平坦な界面を有するMQWが得られることが実証された。一方で、GaAs1-xBix。/GaAsMQwの場合の約2分の1のGaBiモル比でInGaAsBi/GaAsMQWの周期構造に乱れが生じることが明らかになった。これは、GaAs上のInGaAsBi層の成長において、歪を有するInGaAsエピタキシャル層にBi原子が取り込まれにくくなることによるものであると推測される。当該年度の成果は、Bi系III-V族半導体半金属混晶を用いた半導体レーザの製作に必要な、高品質な量子井戸やヘテロ構造を得るための指針を示した点で意義があるといえる。
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