本研究課題は、20世紀末に変容を遂げ、再成長を果たしたGE、および歴史的に関係が強かったWH、東芝、日立を研究対象とし、各企業の全社戦略とガスタービン事業競争力の関係性、およびその市場における外部組織との関係構築・変容のプロセス解明である。10ヶ月のアメリカ滞在の利点を活かし、本年度はアメリカの総合電機企業であったGEおよびWHの20世紀後半期を中心に考察した。(1)まず、GE及びWH、ガスタービン市場に関する新史料発掘および収集を行い、(2)加えて、本研究に関するアメリカの研究者からのアドバイスを得られ、研究アプローチの改善が行えた。(3)また、より経営史研究に適合した投資分析モデルのプロトタイプを構築した。以上を行いながら、(4)20世紀後半期のGEおよびWHの分析をさらに進め、ガスタービン市場に関する考察に着手した。本年度は1970年代GEの新史料の発見(技術戦略・全社戦略に関する史料)、分析モデルの構築に一定のめどが着いたこと(投資と企業成長の相関を組み入れたモデル)、そしてGEと比べ研究蓄積が少ないWHの20世紀後半期の全社戦略の解明をした点(1970年代:製造業深化→80年代以降:成熟産業・サービス産業へ傾倒)で非常に意義があった。当該期の研究成果の一部は宮田憲-「Westinghouse Electric Corporation in the Late 20th Century : A View from an Investment Trajectory Analysis Perspective」において報告されている。また、本年度、論文や学会発表という形では結実していない研究成果については、次年度以降に随時発表していく予定である。
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