酸化物半導体は、材料の持つ特徴からフレキシブル・透明エレクトロニクス野において非常に有望な材料である。特に信頼性の問題を指摘されている酸化物デバイス開発において、本研究は注目を集める内容である。これらは現在、デバイス応用技術の確立が期待されている。しかし、酸化物半導体は、酸素や水素といった大気中に豊富に存在する元素による影響を受けやすく、容易に電気的特性が変化する材料である。従って特性制御と安定化が必須技術となる。現状では企業での応用研究は先行しているものの、基本的な物性評価が十分に行われていない。そのため、根本的な問題点の把握が困難な状況であり、課題は多い。このような課題解決を目指し、酸化物半導体を応用したデバイス開発に有益な情報を提供する。 まず、本研究機関における酸化物TFT作製プロセスの立ち上げを行い、自らデバイスの作製を行った。TFTの基本的な電気特性評価、および実動作時に近い環境での信頼性解析行った。これと平行して、雰囲気ガスによる劣化現象の解析を目指した実験を行った。これらの結果より、実動作時に近いストレス環境では、特定の欠陥準位に起因する劣化現象を報告した。このような特定の欠陥準位の生成という問題点を指摘し、解決手法を導くための知見を得ることができた。また、大気中の水素による影響を示唆する結果が得られ、デバイス作製プロセスにおける耐水素特性向上の重要性を指摘した。このような成果は、今後の安定なデバイス作製プロセスの開発において有益な情報を提供できると思われる。
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