現在までに、様々な手法により安定な人工タンパク質を獲得する研究が精力的に行われている。しかし、人工的な改変を施すことで天然タンパク質のような安定な立体構造の構築を達成することは依然として容易ではない。そこで、本研究ではDNAの核酸塩基相互作用を用いて遠距離の相互作用で安定化させた非天然型の足場構造を構築することを目的としている。具体的には、核酸塩基相互作用を導入するために側鎖に核酸塩基をもつ人工アミノ酸、核酸塩基アミノ酸(NBA)を部位特異的に導入したペプチド・タンパク質の構築を行った。本年度は、前年度までに得られたNBA間相互作用の詳細に関する知見を基にして、NBA導入によりタンパク質の四次構造安定化を目指した。具体的にはプロテインGを二分した両フラグメントにNBAを導入したペプチドを10種類合成し、混合するペプチドの種類を変え再構成実験を行った。NBAを導入した各フラグメントペプチドを混合し、NBA間相互作用の形成によりフラグメント間の平行βシート構造が安定化することで、タンパク質全体の再構成が促進されることを期待した。導入するNBAの種類や位置の最適化により、ワイルドタイプ様の二次構造を示したNBAペプチドペアを見出した。CDスペクトル測定により、そのペプチドペアのフラグメント間の解離定数を算出したところ、ワイルドタイプに比べ約4倍フラグメント間の親和性が向上することが示された。この親和性の向上はDNA中の核酸塩基相互作用の安定化エネルギーに相当することが推察され、核酸塩基相互作用の形成によりフラグメント間の平行βシート構造が安定化されていることが示唆された。
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