屋外および風洞において、都市の建物群を模したスケールモデル実験を行った。実験で用いたParticle Image Velocimetry(PIV)は2次元断面の流速を計測できる手法であり、瞬間的な流れの構造を議論することが可能である。これまでは、実験手法の制約などから、平均の流れ場に重点が置かれてきたが、汚染物質の拡散などは非定常的なプロセスであり、流れの瞬間像を知ることは、そのような非定常現象の理解に対して必要不可欠である。本研究では、大気乱流下において、都市キャノピー層の上端部に発達するせん断層を可視化することに成功し、それが上空からの下降流と街区からの上昇流によって変動していることを示した。また、街区内で間欠的に発生する大規模上昇流を捉え、その上昇流の発生が都市上空に発達する乱流の組織構造に大きく関係していることを示した。この大規模上昇流は、キャノピー層の上端部において通常の4倍程度の運動量フラックスを持つような流れ場である。このことから、大規模上昇流の発生に関わる乱流組織構造の制御が可能となれば、熱や汚染物質、水蒸気の最大のソースであるキャノピー層から上空へのより効率的な乱流輸送が期待できる。そこで、組織構造が地表面性状によってどのように変化するかを調べるために、いくつかの性質の異なる地表面幾何を用意し、PIVを用いた流速測定を行った。本年度は、キューブブロックを正方配列に並べたケース、高さの異なるブロックを正方配列に並べたケースに加えて、平板の3ケースを検討した。それぞれのケースで見られた乱流構造の水平断面の大きさを比較したところ、いずれのケースにおいても相似性が見られ、構造の長さと幅の比が内部境界層で規定できる可能性が示唆された。
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