研究概要 |
前年度までの研究により、都市の街区空間からの物質の拡散現象は,上空に発達する大規模な乱流構造の影響を受けていることが分かってきた.そこで,このような乱流構造が地表面の幾何特性によってどのように変化するのかを検討するため,風洞において4つの異なる特性を持つ地表面幾何を用意し,粒子画像流速測定法を用いて,その上空に発達する乱流構造の比較を行った.その結果、新たに以下の所見が得られた。 1.壁面近傍に発達するストリーク状の乱流構造は,フラットな地表面や建物のある都市型の地表面でも観測され,地表面の幾何性状に関わらず普遍的に存在することが確認された. 2.乱流構造の大きさは,地表面性状に大きく依存する.また,地表面からの距離にも関係し,地表面に近いところでは,高度が上がるほど乱流構造は大きくなり,ある臨界高度を超えると,高度が上がるほど構造が小さくなっていくことが確認された.臨界高度については,地表面の抵抗が大きくなるほど高くなるという傾向が見られた.しかしながら,境界層厚さを用いて乱流構造の長さを無次元化すると,地表面幾何の違いに関わらず,シアのみの関数として表されることが分かった. 3.各高度の乱流構造の長さと幅のアスペクト比をとると,地表面性状にはよらずに,その高度における速度勾配の大きさによって一意に決定されることが示された.また,シアが弱い時には,速度勾配に比例してアスペクト比が増大するが,シアが強くなってくるとアスペクト比がそれ以上増大しない領域が現れる.強いせん断によって生じたケルビン・ヘルムホルツ不安定性により,構造が分断される可能性が考えられる.
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