研究概要 |
風洞実験により,壁面乱流内のコヒーレント構造の地表面幾何依存性を検討した.各地表面幾何上の水平断面における流速分布に対してPOD(直交基底分解)を適用し,乱流構造のスケール分離を行った.水平断面内の風速変動について,2点相関係数の分布を求め,乱流構造の平均的な形状を可視化したところ,新たに以下の所見が得られた. 1.壁面近傍に発達するストリーク状の乱流構造は,フラットな地表面や建物のある都市型の地表面でも観測され,地表面の幾何性状に関わらず普遍的に存在することが確認された. 2.乱流構造の空間スケールは地表面性状に大きく依存するが,内部境界層の厚さと速度勾配による整理が効果的である. 3.対数則層内の乱流構造の長さと幅の比をとると,地表面性状には依らずに,その高度における速度勾配の大きさによって一意に決定される. これらの乱流構造の形状と速度勾配の関係は,数値シミュレーションにおいても再現された.また,数値シミュレーションを用いた乱流の3次元構造の可視化から,地表面近傍のストリーク構造と上空のストリーク構造では,内包する渦構造の分布が異なることが分かった.上空での乱流構造の発達には,下層の乱流構造の有無が重要であることが予測される.このような乱流の性質から,都市型の境界層では下層の乱流構造を強制的に発生させることで上空の乱流構造が活発になると考え,1つの高層建物を配した数値実験により,その有用性を確認した.
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