本研究課題は、スピン分極率100%のハーフメタル・フルホイスラー合金をソース・ドレインとして用いたスピンMOSFETの基盤技術の創出を目的とする。2年目である今年度は、RTAによるフルホイスラー合金の作製技術を様々な材料系で展開し、またスピンデバイスのシミュレーション・デバイスプロセスの確立をおこなった。 フェルミレベルを制御しギャップの中央にそれを移動させることでハーフメタル性を高めたフルホイスラー合金Co_2FeAl_xSi_<1-x>をRTAによるシリサイド化反応で形成した。様々な初期構造を検討した結果、Co_2FeSiの場合と異なり、単体積層膜をSi-on-insulator(SOI)上に堆積(例えば、Al/Co/Fe/SOI等)するのではなく、予めSi以外を合金化したCo_2FeAl_xをSOI上に堆積した構造を用いることで、組成が均一なL2_1型Co_2FeAl_xSi_<1-x>薄膜を形成できることを明らかにした。また、高移動度Geチャネルに整合するスピンMOSFETのハーフメタル材料として期待されるCo_2FeGe薄膜をGe-on-insulator(GOI)を用いたRTAによるジャーマナイド化反応で形成し、得られた膜がエピタキシャル成長していることをX線回折(XRD)測定と透過型電子顕微鏡(TEM)観測によって明らかにした。さらに、ラジカル酸窒化によって形成した極薄SiON上に非晶質Si、Co、Feをこの順で堆積し、RTAを行うことで、L2_1型Co_2FeSi/極薄SiON/Si接合を形成し、ハーフメタル・トンネル接合を形成することに成功した。SiON膜をラジカル酸窒化反応で形成することで、CoやFeのSi基板への拡散をほぼ完全にブロックすることができた。規則度は、L2_1規則度72%、B2規則度92%の高い値を示した。 スピン注入/検出デバイスの構造に関する電界シミュレーション解析も行い、従来広く用いられてきた非局所測定法で得られたスピンバルブシグナルが、スピン注入以外の効果と区別がつかないことを明らかにした。また、スピン注入/検出用のデバイスのプロセスも確立した。
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