本研究は、核内膜蛋白質Nemp1の核膜内の局在と遺伝子発現制御における分子メカニズムを明らかにし、胚発生においてNemp1がどのように関わるのかを解明するものである。それにより、核内膜蛋白質の機能と胚発生における役割に新たな概念をもたらすことが期待される。 本年度、領域Bの結合蛋白質としてRanを同定し、さらに変異体のRanを用いて、GDP型ではなくGTP型のRanと結合することを明確に示した。これは、GDP型は細胞質側に、GTP型Ranは核内に存在することを考えると、Nemp1の機能を明らかにする上で重要な知見である。またRanの結合領域を同定するため、領域Bをさらに欠失させたコンストラクトを用いて、共免疫沈降法を行った。その結果、領域BがRanGTPと結合するためには、領域B全長が必要かつ十分であった。また興味深いことに、BAFとの結合に必要なBBS(BAF binding site)を欠失させたコンストラクトとも、RanGTPは結合しなかった。 次に、Nemp1が制御している遺伝子の候補として、rax遺伝子に着目して解析した。ChIP法により、raxが発現を開始する神経胚初期においてOtx2がraxのエンハンサーに結合していることを初めて示した。またNemp1の過剰発現により、raxエンハンサーをつないだレポーター遺伝子のOtx2による活性化が阻害された。現在Nemp1が核内移行に関わるRanと結合することから、Otx2の核内輸送と核内分布におけるNemp1の影響を検討中である。
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