本年度は、昨年度までに構築の完了した「GLUT4-分子動態計測系」と「光を用いた細胞内環境操作系」とを組み合わせた実験系を用いて、同じく昨年度までに解明したインスリン応答性GLUT4輸送システムの分子基盤とインスリン抵抗性下における輸送障害についてさらに詳細に解析を行う予定であった。しかし、昨年発生した震災によって、実験の遂行に必須である顕微鏡システムが破損し、修理と光学系の再構築が必要となった。また、長期にわたる停電・断水の影響で、実験試料である培養細胞が全て死滅した。さらに、研究室の他キャンパスへの移転も余儀なくされた。そのため、本年度は移転した新たな研究室において震災被害から復旧させることを急務として作業を進め、現在までに顕微鏡システムの再構築は完了し、震災以前に取得していたデータの再現性も確認済みである。また、実験試料や試薬類の復旧も既に完了している。本研究課題は、震災対応により研究期間が一年間延長された。そこで、本来本年度中に行う予定であった解析は来年度中に行い、本研究課題の達成を目指している。以上のように本年度は実験の遂行は困難な状況であったが、速やかに震災以前の状況へと回復させることができたとともに、震災以前までに得られた知見を元に研究代表者を筆頭著者とする論文として報告し、さらにそれらの知見を発表した第54回日本糖尿病学会において若手研究奨励賞を受賞したことは特記に値する。
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