本年度は、ナノ構造体を利用して無標識検出を行うための測定システムの開発を行った。光源には、波長532nmのレーザー光を用いた。無標識検出を行うためのナノ構造体として幅600nm、高さ2.7μmの直方体状のナノ構造体(ナノウォール)を間隔200nmにて微小流路(幅25μm)内部に作製した。レーザー光を対物レンズを通して、ナノウォールに垂直に入射すると、レーザー光がナノウォールによって回折されることを確認した。回折光の検出にはフォトダイオードを用いた。レーザー光をチョッパーによって周期的に変調し、回折光の信号をロックインアンプに取り込み周波数分離・増幅を行い、非蛍光性物質の無標識検出を行った。実験システムの組み立てを行い、今回開発したシステムで無標識検出が可能かどうかを検討した。ナノウォールチップを用いて、ナノウォール領域に純水が有る場合と無い場合(空気)の信号強度の違いを測定することで実験系の基本検出性能の評価を最初に行った。流路に純水が無い状態で回折光をモニターしながら、純水を導入した時の信号変化を検出することに成功した。次に純水から各種緩衝溶液を導入した際の信号変化の検出を行い、溶媒の違いを検出できることを示した。その後、吸光物質(サンセットイエロー)を導入し、サンセットイエローの濃度に応じて検出信号が変化することを確認した。これら実験結果より、ナノウォール領域の僅かな純水・溶解物質・吸光物質の有無によっても、今回構築した無標識測定システムで大きな信号変化として計測できることが確認できた。
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