研究課題/領域番号 |
09J09644
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 大士 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 自己集合 / 配位結合 / 球状錯体 / 糖鎖 / パラジウム |
研究概要 |
当研究室では、パラジウムイオン12個と120°の折れ曲がり角を持つ有機二座ピリジン配位子24個から、M12L24組成の球状錯体が自己集合することを報告している。この錯体は、一義的構造を有しており、また有機溶媒および水に可溶であることから、NMRや質量分析を用いて溶液構造を精密に解析するのに非常に適している。この特徴を利用して、錯体表面を生体膜上に存在する糖脂質クラスターと見なした、「生体膜表面モデル」として活用する研究を行なった。今回、脂質ラフトの実際の構成成分であり、アミロイドβペプチドの凝集過程に関わっているとされる、糖脂質ガングリオシドGM1に着目し、この糖鎖を表面に集積した錯体の合成を行った。昨年度までに、1yso-GM1のアミノ基に対しアルデヒド基を有するピリジン配位子を還元的アミノ化反応により修飾することで、高効率、高選択的にGM1修飾配位子を合成することができた。今回、水溶性を高める目的で、疎水性の高いGM1のセラミド鎖部分をオゾン開裂により切断することを試みた。GM1糖鎖をオゾン分解し、還元処理を行ったところ、目的通り二重結合部分が開裂した生成物が得られた。この糖鎖を、より小さな配位子骨格に連結することにより、水溶性を高めた新たな配位子を合成した。得られた錯体は、狙い通り、完全水溶性を示すことが明らかになった。NMRを用いた解析により、AβペプチドとGM1糖鎖の相互作用を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初合成したGM1糖鎖修飾球状錯体は、十分な水溶性を持ちあわせていなかったが、配位子デザインの工夫により、完全な水溶性を達成することができた。これにより、NMRを用いたAbetaペプチドとの相互作用評価を行うことができ、世界で初めて、AbetaペプチドとGM1糖鎖部分の相互作用を観測することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により、世界で初めて、AbetaペプチドとGM1糖鎖の相互作用を観測することができた。今後の推進方策としては、13C、15N同位体ラベル等を行うことで、より詳細な相互作用の機構を解明することを目指す。また同様に、GM2やGM3糖鎖を集積した錯体を合成し、これとAbetaペプチドの変異体と相互作用させることにより、糖鎖とペプチドの組み合わせによる特異性の解明を行う予定である。
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