オーバーサイズ円形平面アンテナの一種であるラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)は、螺旋状に配列した円偏波放射スロットペアを同軸ピンで給電し、正面方向に高利得を得るが、螺旋配列により開口分布周方向に偏差を持つ。またこの周方向偏差は周波数により角度が回転する。この周方向偏差により放射パターンがカット面により変動し、サイドローブが上昇する角度が発生する。また、開口効率の低下も懸念される。 本研究では、開口分布を角度の関数としたフーリエ級数展開により、右旋円偏波の場合は周方向偏差が-2次の成分のみで近似表現されることを示した。周方向偏差の逆数を逆特性と定義し、給電同軸ピンの周囲に摂動素子として無給電導体ピンを4本配置した給電構造を提案し、周方向逆特性を実現する設計法を考案した。22GHz帯において螺旋配列RLSAと提案給電構造を試作し、設計周波数において周方向偏差を打ち消す効果を確認した。設計周波数以外では、開口分布の回転により周方向偏差を強めてしまうため、利得特性は狭帯域となってしまう。 今後の課題として、螺旋配列により周方向偏差が発生するメカニズムを明らかにし、周方向偏差を最小とするスロットパラメータを追求する。また、より広帯域な開口分布改善手法を提案することも重要である。
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