本研究では、規制行政など、社会管理活動における官民協働のあり方(その具体的手法、政策プロセスの実態、体制・制度設計のあり方など)に注目している。今年度は、主として下記の3つの側面から研究を進めた。 第1に、官民協働に関係する理論・モデルの整理とそこからの論点抽出、である。具体的には、従来「官民の相互依存の中にでき上がる社会管理のシステム」と捉えられてきた「行政指導」、階統型ガバメントと非階統型カバナンスとの関係性、及び、「行政裁量」を採り上げ、理論的側面から検討した。これらの観点から事例を比較・考察することは、「規制空間」のあり方を理論的・実証的に捉えるために重要かつ有意義だと考えている。 第2に、具体的事例の分析、である。電気用品安全法に基づく規制とVCCI協会による自主規制を採り上げ、官民協働の手段選択の条件について行った比較研究では、両者の手段・制度における違いが、初期条件の違いのみならず、規制対象の事故・障害の危険性・規模・頻度、手段選択時における規制対象技術の進展・変化(の見込み)における違い、実効的な規制を行うための資源を民(被規制者)がどれほど有しているかといった点、及び、1980年代以降の規制改革が直裁に影響したか否かという観点からも説明され得ることを明らかにした(この成果は、『社会技術研究論文集(Vol.8)』に採録決定)。 第3に、これまで観察してきた自動車・木造住宅・電気用品などの事例の比較分析、及び、一般的知見の導出である。現時点では、個別の「規制空間」のあり方とその変容を規定する諸条件を仮説的に抽出している段階であり、今後さらに事実関係の調査と考察を進めることによって、それらを実証していく計画である。 さらに、第12回国際交通学会と第7回社会技術研究シンポジウムにおいてこれまでの研究成果を発表し、国内外の研究者と意見交換ができたことも、今年度中の大きな収穫であった。
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