研究概要 |
私は,平成21年度,キュウリ芽生えの根と胚軸の境界領域の重力感受細胞であると推測される内皮細胞で発現しているオーキシン排出キャリアであるCsPIN1の免疫組織化学染色を行う際の固定液を検討し,従来よりも強いCsPIN1に対するシグナルを得ることに成功した。本方法を用いてCsPIN1の重力応答性を解析した結果,重力刺激を与えて横倒した芽生えの境界域の上側に位置する内皮細胞の下側の細胞膜のCsPIN1タンパク質の蓄積量が,重力刺激を与えてから30分後に増加することを発見した。 また,境界領域のオーキシン量を測定するために,首都大学東京生命科学専攻小柴研究室と共同研究を進めた.内部標準として^<13>C-IAAを用い、GC-SIM-MSにより,境界領域に重力刺激を与えて経時的にオーキシンを定量した定量し,境界域の上下のオーキシンの偏差分布は重力刺激を与えてから30分後に認められることを明らかにした.このことより,境界域のオーキシンの偏差分布の誘導にCsPIN1の蓄積の変化が機能している可能性を示唆した。 さらに,境界領域の上下におけるCsPIN1タンパク質の生化学的な量の差異を検証するために,境界領域の上下を切り分けて総膜画分タンパク質を抽出し,CsPIN1抗体を用いた免疫ブロッティングを行った結果,境界領域の上下ではCsPIN1タンパク質の量は同量であることを明らかにした.このことより,境界領域の重力刺激依存的なCsPIN1の局在変動は,CsPIN1のタンパク質量の変動を伴わない重力応答であることを明らかにした. 本研究成果は,内皮細胞が重力刺激に応答してオーキシンの偏差分布を誘導する新しいモデルを提唱できる点が評価される。
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