研究課題
植物の重力応答機構の解明は、植物の重力環境への適応と進化の意味を理解する上で重要な研究課題である。本研究では、キュウリ芽生えの重力形態形成(ペグ形成)とオーキシンの輸送の関わりを明らかにすることを目的にしている。前年度までに、私はキュウリ芽生えの重力形態形成において、重力感受細胞である内皮細胞で発現するオーキシン排出キャリアCsPIN1の局在パターンを免疫組織化学的に解析し、CsPIN1が重力感受細胞である内皮細胞の細胞膜に局在し、その局在が重力刺激に応答して局在が変動することを見いだした。これらの結果より、重力刺激依存的なキュウリ芽生えの形態形成にはCsPIN1を介したオーキシンの輸送が関与するという新規モデルを提唱し、Plant Physiologyに原著論文として投稿し、論文が受理された(2012年1月)。本年度は、さらに上記の結果が真の重力応答であることを確認するために、国際宇宙ステーションを利用した宇宙実験に参加し、宇宙の微小重力環境下で育てた芽生えにおいて、前年度までの結果の再現性を検証した。その結果、宇宙実験でも前年度までの結果が再現され、重力刺激を受けたペグ形成領域では、内皮層を通って上側から下側へオーキシンが輸送されることにより、オーキシンの偏差分布が誘導される仮説を提唱した。これらの研究成果により、1920年代に提唱された「屈性の原因はオーキシンの横輸送によるオーキシン偏差分布に起因する」とするColodny-Went説の分子レベルでの理解が可能となった。本研究結果は植物生理学において極めて大きい意義を持つ研究成果であった。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Plant Physiology
巻: 158 ページ: 239-251
10.1104/pp.111.188615
巻: 157 ページ: 1209-1220
10.1104/pp.111.186270