研究概要 |
昨年度、anti選択的触媒的不斉ニトロアルドール反応用触媒の開発及び触媒構造の解明に取り組んだ。また、当該触媒をanti選択的触媒的不斉ニトロマンニッヒ型反応へ応用することにも成功した。近年世界的規模で大流行が危惧されている鳥・新型インフルエンザに対し、タミフルと異なりリレンザにおいては耐性ウイルスの報告はない。一方で、リレンザが注目を集めてこなかった理由は、消化管吸収率が低く服用法が手軽ではないためである。そこで私は、先の触媒的不斉ニトロアルドール反応を用い、フレキシブルな誘導体合成を可能とするリレンザの触媒的不斉合成ルート確立に取り組むこととした。以下に逆合成解析を記す。まず、リレンザの環状エーテル部位をPrins-Ritter反応により構築できるものとし、生じるアリルアルコール類縁体側鎖のトリオール部位は対応する末端アリルアルコールのSharpless不斉エポキシ化とエポキシ開環反応により構築出来ると考えた。末端アルコールは適切な保護基によって保護され、1,2-antiアミノアルコールは対応するニトロアルドール体から得られると考えた。そこでまず、(E)-4-hydroxybutenal(1)と4-nitrobut-1-ene(2)とのニトロアルドール反応を検討した。反応はアルデヒド1の保護基に依らず比較的高い立体選択性で進行した。また、1,4-付加反応は低温下では抑えられた。次に、Znによるニトロ基のアミノ基への還元・保護を行い、アミノアルコールを足掛かりとしたSharpless不斉エポキシ化反応を検討したが、反応は全く進行しなかった。そこで、末端アリルアルコール部位を足掛かりとした上記エポキシ化反応を行うと、アミノ基の保護基がBoc基の場合にのみ反応が進行し、4:1のジアステレオ選択性にて目的物を与えた。得られたエポキシアルコールをTBAFにて処理することにより、所望のトリオールへと導くことが出来た。現在得られたトリオールをBn基にて保護し、Prins-Ritter反応を検討中である。
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