研究課題
(1)鱗を用いた生息環境履歴の推定淡水及び海水の飼育実験で得られた個体の鱗を用い、鱗の成長線である隆起線に生息環境が反映されているかについて検証した。飼育期間における鱗縁辺部の隆起線のSr量は、淡水飼育個体に比べ海水飼育個体の方が有意に高く、鱗の隆起線のSr量がそれぞれの飼育環境を反映している可能性が示唆された。また、隆起線の局所定量化を行うために、薄切標準試料を作製した。作製した標準試料は、0-500ppmの濃度範囲で良好な検量線が得られ、淡水・海水飼育個体における隆起線のSr濃度を明らかにすることができた。これらの結果から、隆起線単位で生息環境を推定できる可能性が示唆された。(2)イトウの成長と食性イトウ成魚について、その短期的な食物源を解剖による胃内容物調査から明らかにするとともに、イトウとイトウの生息水域における主な餌生物の筋肉の炭素窒素安定同位体比分析から長期的な食物源も解析した。胃内容物分析から、降海型イトウはイカナゴ、ウグイ、サンマ、カレイ等を捕食していた。炭素窒素安定同位体比分析の結果からは降海型イトウは高い栄養段階(δ15N(%):14.5,δ13C(%):-19.1)に位置すること、また筋肉に反映されるまでの数週間~数ヶ月間沿岸域の餌資源を利用していた可能性が明らかになった。一方、河川のイトウの胃からはドジョウが確認され、炭素窒素安定同位体比分析からはヤマメやスジエビ、ドジョウの寄与率が高いことが示された。降海型イトウと比較し、河川で生活していたイトウ成魚の肥満度は著しく低く、餌場・成育場としての沿岸域の重要性が示唆された。(3)同所的に生息するイトウとヤマメの食性同所的に生息するイトウ幼魚とヤマメ幼魚の食性を明らかにすることを目的として、ストマックポンプを用いた胃内容物調査を行った。同定分類群ごとに個体数と湿重量を計測し、各分類群の割合を分析するとともに、分類群を水生昆虫と陸生昆虫にまとめ比較した。IRI値の結果は、イトウ幼魚では水生昆虫であるカゲロウ目が52.3%と最も高く、ヤマメ幼魚では陸生落下昆虫であるチョウ目(幼虫)が61.4%と最も高いことが明らかになった。また、全体でもイトウ幼魚のIRI値の80%以上が魚類(イトウ稚魚,フクドジョウ)、甲殻類(ヨコエビ)、水生昆虫で占められていたのに対し、ヤマメ幼魚では95%以上が陸生落下昆虫であった。以上のことから、イトウは底生の餌資源が、ヤマメは河畔林から供給される餌資源が主であり、イトウとヤマメが資源分割しながら同所的に生息していることが明らかになった。
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International Journal of PIXE
巻: 22 ページ: 173-178
Journal of Applied Toxicology
巻: (In press)