ラジカル制御による低誘電率層間絶縁膜のダメージフリープロセスを実現するための研究計画に基づき、平成21年度は、低誘電率層間絶縁膜へのH_2/N_2プラズマアッシングダメージ発生のメカニズム解明を行った。まず、研究計画に基づき、FT-IR計測の高精度化のため金属上に製膜したポーラスSiOCH膜を採用した。また、半導体製造プロセス中にLow-k膜がダメージを受ける状況を再現するため、Siプレート、MgF_2ウィンドウを、チャンバー内で水平移動可能なプローブに吊るし、サンプル上に密着あるいは隙間を空けて配置することでH_2/N_2プラズマアッシング時にプラズマ中のイオン、ラジカル、光がポーラスSiOCH膜に与える影響を分離して評価をおこなった。実験ではin-situで計測可能な反射型FT-IRおよび分光エリプソメトリーを備えた二周波容量結合型プラズマ装置を用い、ポーラスSiOCH膜へH_2/N_2プラズマを曝露させその変化を観測した。H_2/N_2プラズマの内部パラメータ計測として、H_2/N_2プラズマ中のHラジカルおよびNラジカルの影響を調べるため、真空紫外吸収分光法によるラジカル密度計測を行った。これらの表面計測およびプラズマ計測の結果より、H_2/N_2プラズマおよびその後の大気曝露によりポーラスSiOCH膜中および表面で起こる反応を解明した。また、ラジカルと光の相互作用によりポーラスSiOCH膜中のO-Si-OのLinear構造の一部がNetworkやCage構造に変化、その後の大気曝露によりCage構造への変化が促進されることを明らかにした。これらin situでのFT-IR高感度反射吸収分光法と分光エリプソメトリーによる表面計測およびポーラスSiOCH膜とプラズマの化学反応に直接関わるラジカルの密度を計測し、ダメージ発生の解明を試みた例はなく、これらの知見はULSI製造プロセスの構築に重要な示唆を与えるものである。
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