ラジカル制御による低誘電率層間絶縁膜のダメージフリープロセスを実現するための研究計画に基づき、平成22年度は、低誘電率層間絶縁膜へのH_2/N_2プラズマアツシングダメージ発生のメカニズム解明を行った。半導体製造プロセス中にLow-k膜がダメージを受ける状況を再現するため、Siプレート、MgF_2ウィンドウを、チャンバー内で水平移動可能なプローブに吊るし、サンプル上に密着あるいは隙間を空けて配置することでH_2/N_2プラズマアッシング時にプラズマ中のイオン、ラジカル、光がポーラスSiOCH膜に与える影響を分離して評価をおこなった。実験では100MHz/2MHz二周波容量結合型プラズマ装置を用い、ポーラスSiOCH膜へH_2/N_2プラズマを曝露させその変化を観測するため、in-situで計測可能な反射型FT-IR、分光エリプソメトリーおよびex-situでXPS、SIMSなどの表面分析を行った。これらの表面計測の結果より、H_2/N_2プラズマおよびその後の大気曝露によりポーラスSiOCH膜中および表面で起こる反応を解明した。具体的にはラジカルと光の相互作用によりポーラスSiOCH膜中のO-Si-OのLinear構造の一部がNetworkやCage構造に変化、その後の大気曝露によりCage構造への変化が促進されること、Si-C=NH等の結合が表面に生成されることにより保護膜としての役割を果たすことを解明した。またこれらin situでのFT-IR高感度反射吸収分光法と分光エリプソメトリーによる表面計測およびポーラスSiOCH膜とプラズマの化学反応に直接関わるラジカルの密度を計測し、ダメージ発生の解明を試みた例はなく、これらの知見はULSI製造プロセスの構築に重要な示唆を与えるものである。
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