今年度の研究では、初期フッサールにおける志向性理論の基本構造である作用・意味・対象の相関構造の明晰化、無対象表象の問題ないし志向・充実の動的構造を理解する上での意味概念のもつ計算論的・手続き的性格の解明、意味概念のもつイデアリテート・レアリテートの二重構造の説得的な解釈へ向けての試みと、それら初期志向性理論の基本構造の中期における動揺の誘因を明らかにする試みに着手した。具体的にはMichael Dummettのフレーゲ解釈における「意味論的値」の概念にヒントを得てフッサールの対象概念を論理学的枠組みから徹底して解釈し、意味を対象探索手続きとして捉える視点を具体的な計算論的モデルにおいて明確化、さらに意味の二重構造をその側面から捉え直した。以上の成果を踏まえ、その基本構造が中期以降のフッサールの思想発展の歩みにおいてどのような動揺を余儀なくされたのかを理論の内部から明らにした。
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