マウスの妊娠確認後、EGFR阻害剤を持続投与し、妊娠5日目に着床数を計測したところ、EGFR阻害剤の有無により着床数に有意な変化は認められなかった。人工脱落膜化モデルマウスにEGFR阻害剤を投与したところ、ごま油投与2日後の子宮重量に変化は認められなかった。子宮内におけるEGFリガンド群の代償的発現上昇が認められたが、脱落膜マーカーであるBMP2の発現量は依然上昇した。これらの研究より子宮に存在するEGFRは必ずしも胚着床に必要ではない可能性が示唆される。 人工脱落膜化モデルマウスの子宮管腔内にごま油を投与したところ、2時間後にはHB-EGFの発現上昇が認められた。HB-EGFと同じく着床部特異的局所発現性を有するEregの発現も上昇傾向を示したが、同じEGFファミリーに属するEGF、Aregの発現変動は認められなかった。このことから、ゴマ油投与による人工脱落膜化モデルは、正常子宮全体を用いた遺伝子発現解析では検出できなかった子宮上皮の局所反応を解析できるモデルである可能性が示唆された。このモデルマウスを用いて子宮組織における遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイ法を用いて検査したところ、ゴマ油投与子宮角特異的に発現変動する遺伝子が多数新たに見つかった。これらから29遺伝子を絞り込み、より精度の高いRT-PCR法により再検証したところ、12遺伝子がゴマ油投与子宮角特異的に発現変動する遺伝子として確定した。これら12遺伝子は着床部特異的局所発現性を有し、胚盤胞由来シグナルを子宮へ伝達する際に重要な役割を担う可能性がある。
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