研究概要 |
今日の新規勃興産業の歴史的経緯を分析するうえで,産業革命を契機とする技術進化および経済発展の過程を理解することは必要不可欠である. 平成21年度は研究対象であるインターネットサービス産業の調査をより正確かつ広範に行うことを可能とするための,経営史学およびイノベーション研究における基礎的な理論の理解に重点をおいた. また,ヨーロッパおよびアジアにおける同種研究の状況について調査・成果発表を行うことを目的として、ヨーロッパ経営史学会(Europe Business History Association;イタリア,テルニ)およびGlobal Institute of Flexible Systems Management(インド,ムンバイ)での研究発表を実施した.また,Global Journal of E-business & Knowledge Managementにこれまでの研究成果を査読論文として提出した. 日本のインターネットサービス産業の動態を明らかにするため、インターネットホスティング産業の製品情報、販売価格に関するパネルデータ収集および定量解析を実施した.本研究を通じ,インターネット産業におけるイノベーションが技術の優越性,あるいは先行者利益によってのみ左右されるという既存の見方を否定し,技術の社会構築性(social construction of technology)の観点において,特定の社会グループの傾向,選好が技術開発および製品の構成に大きく作用することを示すことができた.このことは,産業分析および技術革新に関する既存研究に対する貢献であり,また,同世代史を詳らかにする経営史学として,実証研究的役割を果したといえる.
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