研究課題
前年度から引き続き、宇宙で最小のダークマターマイクロハローの構造や、ダークマター対消滅による銀河系内ガンマ線シグナルへの寄与を調べた。今回は新たにマイクロハローの形成時刻の分布を、プレスシェヒター理論を用いて見積もることで、銀河系内のガンマ線光度をより正しく評価した。結果、太陽近傍のマイクロハローは、中心部の視角がFermiの分解能と同程度であるため、大きな固有運動を持った明るい点状のガンマ線源として観測される可能性があることがわかった。この結果を前年度の結果とあわせて、アストロフィジカルジャーナル誌にて発表した。また日本やオランダの研究者を中心とした、"Cosmogrid Project"を推進した。まずはじめにグリッド化された宇宙論的N体シミュレーションコードを開発した。地理的に離れた複数の大型計算機を同時に使ってシミュレーションを実行できるようにすることで、ひとつの計算機ではできないほどの大規模計算を可能にした。次に開発したコードを一部用いて、粒子数80億、シミュレーション領域30Mpc立方の超大規模宇宙論的N体シミュレーションを実行し、矮小銀河スケールのダークマターハローの統計的性質を調べた。その結果ハローの中心集中度はハロー質量に弱く依存するが、小さいハローほど依存性が徐々に弱くなっていくことがわかった。これは銀河や銀河団サイズのハローで得られた中心集中度の質量依存性を使って、矮小銀河やそれより小さいハローの中心集中度を見積もると、ハローの中心密度を過剰に見積もってしまうことを意味する。グリッド計算の詳細についてをIEEEコンピューター誌に発表した。コードの詳細についての論文はコンピュテーショナルサイエンス&ディスカバリー誌にて受理された。科学的成果の論文についてはアストロフィジカルジャーナル誌にて査読中である。
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Computational Science and Discovery
巻: 4
Astrophysical Journal Letter
巻: 723 ページ: 195-200
IEEE Computer
巻: 43 ページ: 63-70