研究概要 |
本研究は,ヒトが歩行中に転倒するもっとも主要な要因である『つまずき』が生じる一因を解明するために,ヒトが歩行中に足部の位置をどの程度正確に知覚できているか,その特性を実験的に明らかにすることを目的とした. この目標を効率よく達成するために,本年度は研究計画に基づいて「I.歩行動作中の足部内側・外側位置の知覚特性」について主に実験をおこなった.その結果,ヒトの足部は歩行中遊脚期にも30mm程外側に偏っている事が確認された.これらの結果は,先行研究で著者らが行った研究とも整合性がとれるものであった.更に本年度は実験計画を前倒しして,「III.歩行動作中の足底部における垂直位置の知覚特性」の準備も行った.これは先行研究と同様に,従来のモーションキャプチャーシステムでは知覚している足部位置を正確に表すことが難しいためである. また,H22年1月より米国コネチカット州のコネチカット大学に研究拠点を移し,同大学内Center for the Ecological Study of Perception and Action(CESPA)にて歩行中にヒトが知覚している足部の位置を更に詳しく評価するための手法及び,それらの知見に基づいた転倒防止策などの検討を行った.このCESPAでの研究活動によって,ヒトの知覚機能を上手に利用した転倒予防策や健康増進法,リハビリテーション法などの可能性が得られ,当初予定していたヒトの知覚機能の評価にこれらのアイデアを加えることで,新たな視点での転倒予防策が提案できるものと考えている. 今後はCESPAでの研究活動を継続しつつ,帰国後に行う前後方向や垂直方向の誤差についての実験についても準備を進めていく予定である.
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