研究概要 |
本年度は連続的1,3-ポリオール合成に関する研究を行った。マクロライド系抗生物質に代表されるように、1,3-ポリオール構造は多くの生物活性化合物に見られる構造である。しかし、その一般的合成法は、補助基の使用やアルコールの保護、酸化・還元の工程を要するなど問題点が多く、類縁体の化学的合成は困難を伴う。そこで、これらの問題点を解決すべく、Amphotericin Bの効率的合成を目的とした、連続的1,3-ポリオール合成法の開発を行っている。現在、ヒドリドの転移によってアルデヒドの酸化・還元を促進する触媒を用いた反応系を検討している。本反応は、酸素を始めとする適切な水素受容剤を用いることで、環境調和型の連続的ポリオール合成反応へと展開可能であると考えており、触媒的不斉タンデム反応による連続する不斉中心の一挙構築の実現に向けて研究を進めた。 その結果、ルテニウム触媒を用いることで、原料となるアルコールの酸化、および、アルデヒド同士のアルドール反応の生成物であるアルドールの系中でのジオールへの還元が進行することが分かった。しかし、酸化・還元を推進させるルテニウム触媒と共存可能かつ効果的なアルドール反応推進のための触媒を発見若しくは創製するには至らなかった。今後、アルドール反応推進のための触媒の更なる探求により本研究は大きく進展するものと考えられる。 さらに、電極反応を用いた酸化反応についても初期的な検討を行った。電極を用いて原料の化合物から電子を奪い酸化反応を進行させることは、廃棄物を生成しない理想的な酸化反応の一つである。そこで、電極反応とホモジーニアス触媒を用いた酸化的C-H結合活性化反応や様々な酸化反応に対して検討を行った。現段階で特筆すべき結果は得られていないものの、今後の検討により大きく進展する可能性を秘めているものと考えられる。
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