研究概要 |
1.有機低分子化合物の蛍光Ca^<2+>指示薬を用いた画像法では、導入効率の問題から染色可能な時期が幼若期に限られ、成獣期の動物に使用することには限界がある。また一過的に可視化できるが、長期間繰り返し神経活動を可視化し、その可塑的変化を記録することは困難である。そこで、既存のセンサタンパク質であるG-CaMP2を改良することで、現時点で最も時間分解能と信号のSN比で優れた蛍光Ca^<2+>センサタンパク質G-CaMP4を開発した。このセンサでは、単一スパイクを安定して正確に検出することが可能であり、さらに1秒間で10回以上連続して生じるバースト発火さえも、1つ1つスパイクタイミングを正確に検出可能である。この結果を国内外の学会で発表すると共に、論文を近日中にJournal of Biological Chemistry誌に投稿する。さらにαCaMKIIプロモーターの下流にG-CaMP4の遺伝子をもつDNAの構築を行いマウス受精卵に導入し、遺伝子組換えマウス作製を開始した。高齢発症しやすい神経疾患の観点からも、成獣期での記憶の形成、破綻の正確な機構究明がこのセンサにより可能となる。 2.幼若期海馬スライス標本を用いて歯状回に刺激電極にて電気刺激をした際の海馬CA3野での活動量が、CA3野への直前の抑制性入力のパターンによって調節されることを見出した。刺激タイミングに注目することで、刺激依存的なアンサンブルを人工的に誘起可能か今後検討し、記憶形成時のメカニズムを探求する。 3.蛍光イメージングでin vivoパッチクランプ記録を効率的に実現するため、パッチクランプ電極の先端を蛍光で可視化する技術を開発した(Ishikawa et al.2010)。この発明は、現在特許申請中である。また圧力や温度により様々な神経回路活動を誘起する共に、活動を評価する新規の解析法を開発した(Mizunuma et al.2009,Li et al.2010)。
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