Arl13bはArf/Arlファミリーに属する低分子量G蛋白質であり、近年の順遺伝学的手法を用いたスクリーニングにより、その欠失により繊毛の形態や機能に異常を生じることが明らかとなってきた。ヒトにおいてもArl13bの変異が繊毛性疾患であるジュベール症候群を引き起こすことが知られている。Arf/Arlファミリー低分子量G蛋白質は主に小胞輸送を制御することが知られており、Arl13bも関連した機能を有することが期待されるが、その詳しい機能メカニズムは明らかとなっていなかった。申請者らは、哺乳動物細胞を用いた解析により、Arl13bがN末端側に受けるパルミトイル化修飾により繊毛の膜に繋留されることを見いだした。また、線虫を用いた解析により、Arl13bの欠失により繊毛が短縮し繊毛内に異常な膜構造が出現すること、繊毛内物質輸送システム(IFT)に影響を及ぼすこと、IFTにより輸送される繊毛内膜蛋白質の局在が異常になることを見いだした。これらの結果から、Arl13bが繊毛膜においてIFTによる膜蛋白質の輸送を直接あるいは間接的に制御して、繊毛の形態維持に重要な役割を担っていることが示唆され、これらの輸送系の破綻がジュベール症候群の原因となっている可能性が考えられる。他の繊毛性疾患の原因遺伝子産物においても同様の表現型が生じることが明らかとなっており、今後Arl13bの機能の分子基盤を探ることにより、繊毛の形態維持機構や繊毛性疾患の発症機構が明らかになることが期待される。
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