研究課題
本研究は、動脈硬化症など炎症性疾患の原因物質と考えられている活性酸素種(ROS)を生体内で可視化することにより、ROSの生理機能解析および炎症性疾患の早期診断を可能にする手法の開発を目的としている。申請者は、これまでに生体の深部で測定可能な近赤外蛍光を利用したROS検出蛍光プローブを開発し、生きた動物個体中においてROSを可視化することに成功した。そこで、本年度は以下の二点について研究を進めた。1.さらなる生体深部組織からの信頼性の高い計測を目標として、プローブの高機能化に向けた基礎検討を行った。具体的には、色素のタンパク結合性を利用して蛍光法と核磁気共鳴画像法(MRI)を組み合わせることを考え、予備的検討としてタンパク結合を制御原理とした蛍光プローブの開発を試みた。その結果、スクアリン酸系色素を蛍光母核としてβ-ガラクトシダーゼの酵素活性を検出可能な新規近赤外蛍光プローブの開発に成功した。タンパク結合性を蛍光プローブ開発に応用することは新たな試みであり、既存の設計手法では困難であった酵素活性検出蛍光プローブの開発に成功したという点において、本研究は近赤外蛍光プローブの開発研究に大きなインパクトを与えるものである。2.開発したROS検出蛍光プローブを用いて、ROSの生理機能解析を行った。具体的には、ハイドロダイナミクス法という遺伝子導入法において虚血再灌流によって生じるROSの関与が示唆されており、開発した蛍光プローブを用いてROSの可視化を試みた。その結果、ROS検出プローブと同様の設計原理に基づいて開発された虚血状態可視化プローブ(Kiyose et. al J. Am. Chem. Soc.)を用いた検討から、ハイドロダイナミクス法による遺伝子導入において虚血再灌流状態が関与していることが明らかとなった(Takiguchi et. al Pharm. Res.)。
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Pharmaceutical Research
巻: 28 ページ: 702-711
Journal of the American Chemical Society
巻: 132 ページ: 15846-15848