研究課題/領域番号 |
09J10707
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松成 ひとみ 明治大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ブタ / クローン / 遺伝子改変 / 赤色蛍光タンパク質 / トランスレーショナル・リサーチ |
研究概要 |
【実施内容】我々は、レトロウイルスベクターを用いてKusabira-Orange(huKO)遺伝子を導入した、全身性に赤色蛍光を示す遺伝子改変(Tg)クローンブタの作出に成功している。前年度に引き続き、このTgクローンブタの後代産仔を作出し、産仔における遺伝子伝達動態ならびにその表現型を解析した。本年度は、前年度に獲得した第1世代(G1)雄の凍結精子から、人工授精(AI)あるいは体外受精(IVF)によって第2世代(G2)産仔を作出することに成功した。G2世代は12回の分娩で77頭(雌:34頭、雄:43頭)の産仔が得られ、そのうち39頭がTgであった。Tg産仔率は50.6%(39/77)であり、メンデリズムに従ってhuKO遺伝子が後代に伝達されていることが確認された。さらに、Founder Tgクローン世代、G1、G2世代ブタのhuKO遺伝子はFISH解析により第17染色体q12領域の一箇所に挿入されていることが確認された。G2世代の個体にはFounder Tgクローンに見られた全身性赤色蛍光発現の表現型が引き継がれていた。得られたTg産仔は、靭帯再建研究、ハイドロキシアパタイトを用いた骨修復研究、新生仔肝細胞移植研究(いずれも共同研究)に使用され、赤色蛍光の細胞マーカーとしての有用性が実証された。 【意義・重要性】レトロウイルスベクターにより導入されたhuKO遺伝子は2世代の有性生殖を経た後もジーンサイレンシングを受けることなく発現が維持されること、導入されたhuKO遺伝子はFISH解析により染色体上の一箇所に1コピー挿入されていることが明らかになったことは、Tg動物として系統化を図る上で重要な知見である。すなわち、継代によって導入遺伝子のコピー数が変動しない、安定的なTgブタの系統が確立されたと言える。獲得したhuKO後代産仔が整形外科、小児科、再生医療等の研究に用いられ、顕著な果が上がっていることから、本研究の最終目的であるへのhuKO Tgブタの利用が十分に達成できたと考える。凍結精子を用いた、体外受精や人工授精による増殖法も確立されたので、今後一層huKO Tgブタの研究利用が進展すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では全身性に赤色蛍光を発現するTgブタのCharacterization(遺伝子伝達並びに発現)、増殖方法の確立、生殖細胞の保存などの系統化に取り組むことを目的としていた。到達目標をクリアし、さらにhuKO Tgブタのトランスレーショナル・リサーチへの利用も始まったことから、概ね順調に研究計画は進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、3年間では完遂出来なかった組織幹細胞の樹立ならびにそれらの特徴解析を進めていく。huKO Tgブタ細胞からiPS細胞の樹立にも取り組んだ(共同研究)が、キメラ形成能を証明するには至っていない。樹立した様々な幹細胞を大型動物であるブタを用いた細胞移植研究等に用いて、げっ歯類実験動物では得られないヒトへの外挿性の高い知見を得ることが細胞移植医療に結びつくものと考える。
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