消化管においては細菌排除に必要な免疫と食物に対する寛容の相反する二つの作用が同時に存在する。この仕組みを維持するのが新規ヘルパーT細胞サブセットTh17と誘導型抑制性T細胞iTregと考えられる。我々はこの二つのヘルパーT細胞の分化制御機構の解明を目指している。この2つの細胞集団はともにTGF-βで誘導されるがTh17にはIL-6が、iTregにはIL-2がさらに必要である。しかし早期のマスター遺伝子RorγtとFoxp3の誘導はTGF-β1単独刺激でも起こる。Foxp3の誘導にはTGF-β1の下流の転写因子SMAD群が必要であるがRorγtの誘導にはそれらは必要ない。我々はRorγtの発現に関与するSMAD非依存的なTGF-β1シグナル経路を同定する為に各種阻害剤を用いて検討した。C57BL6/Jマウスの脾臓及びリンパ節より、primary T細胞(CD4+、CD25-、CD62Lhigh)をMACSにより単離した。プライマリーT細胞を各種阻害剤で1時間処理した後、抗TCR抗体、抗IFNγ抗体、抗IL-4抗体及びTGF-β1を加え24時間培養後回収し、Rorγt、Foxp3の発現量をreal-time RT-PCR法により測定した。TCRシグナルへの影響をみるためにIL-2mRNAのレベルも測定した。TGF-β1刺激により誘導されるRorγt及びFoxp3の発現は、TGF-βReceptor I阻害剤(SB431542)によりそれぞれ95%、75%程度抑えられたことより本アッセイ系は評価できるものと考えた。このスクリーニングによりTGF-β1により誘導されるRorγtの発現を50%以上抑える阻害剤、逆に発現を2倍以上上昇させる阻害剤を複数見いだした。
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