(平成21年度の研究結果)Nes-CreERT2を用いた標識細胞は、ラセン神経節においてはSox10(神経堤由来シュワン細胞マーカー)が陽性のものが多く、主に神経堤由来細胞であると考えられた。それを踏まえて、Wnt1-Cre; CAG-EGFPマウス(神経堤由来細胞を標識することが可能)のサンプルの譲渡を受け、予備実験を行なった。その結果、Wnt1-Creによる標識細胞は、ラセン神経節においてNes-CreERT2を用いた標識と同様の発現パターンであり、Nes-CreERT2よりも高率に認められた。また、前庭感覚上皮内にも少数ながらGFP陽性細胞が認められ、標識細胞は有毛細胞前駆細胞あるいは複数の細胞種に分化しうる内耳幹細胞を含んでおり、内耳幹細胞は神経堤由来である可能性が高いと考えられた。 (平成21年度の研究課題の達成状況)Nes-CreERT2を用いたマウス蝸牛ラセン神経節標識細胞の細胞系譜追跡と分離培養・分化誘導法の確立を行なう予定であったが、標識が非特異的組み換えによるものである可能性を除外するため、細胞系譜追跡はNes-CreERT2とWnt1-Creの両方でおこない、結果が一致するかどうか確認することにした。また、分離培養はより効率の高い標識が可能なWnt1-Creで行なうべきと考えられた。現在Wnt1-Creマウスの譲渡を受けて、当方のマウス飼育施設に導入しているところである。 (副次的研究の進展)副次的に行なっていたマウス蝸牛感覚上皮に関する二つの研究(マウス蝸牛感覚上皮におけるHes遺伝子群の役割、および、マウス蝸牛感覚上皮におけるヘッジホッグシグナル伝達の役割)が進展し、いずれにおいても聴覚器の発生に関する重要な知見が得られている。
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