意義:マウス蝸牛ラセン神経節の有毛細胞前駆細胞、あるいは内耳幹細胞の存在を明らかにし、今後の蝸牛有毛細胞再生研究の手がかりとする。 研究内容:1.Nes-CreERT2およびWnt1-creと蛍光レポーター発現の2重遺伝子改変マウスを用いたマウス蝸牛ラセン神経節標識細胞の細胞系譜追跡と分離培養・分化誘導法の確立;標識細胞が有毛細胞前駆細胞、あるいは内耳幹細胞であるかどうかを明らかにする。2.マウス蝸牛ラセン神経節の有毛細胞前駆細胞において有毛細胞への分化を制御する因子の探索;前駆細胞を有毛細胞に誘導するための方法を探索する。 研究成果:1.Nes-CreERT2を用いた細胞標識の場合、蝸牛感覚上皮内に有毛細胞マーカー陽性の標識細胞が低頻度ながらも観察され、標識細胞が有毛細胞前駆細胞である可能性が示唆された。また、標識細胞が蝸牛感覚上皮に出現するのは胎生16.5日から胎生17.5日の間であることも明らかとなった。一方、Wnt1-creを用いた細胞標識の場合、有毛細胞内に標識細胞は観察されず、サンプリング数を増やして実験を継続する必要があると考えられた。2.ヘッジホッグシグナル伝達が生体内において、蝸牛感覚上皮前駆細胞の有毛細胞への分化を抑制することが明らかになった。また、前駆細胞の未分化状態を維持するのに必要な因子につき、ヘッジホッグシグナル伝達の鍵となる膜タンパクSmoothenedのコンディショナルノックアウト蝸牛およびSmoothened持続発現蝸牛の組織を用いたDNAマイクロアレイが施行され、候補が絞り込まれた。
|