1.ヒト大腸癌臨床検体を用いた研究 大腸癌患者の血清CHI3L1値をELISAで調べたところ健常者に比べ有意に高値を示し、また進行度が上がるにつれ有意に上昇した。そこで、ヒト大腸癌検体の癌部と正常部からmRNAを抽出しCHI3L1の発現をRT-PCR法で比較しところ癌部にて有意に発現が亢進していた。またCHI3L1の免疫染色をおこなったところ、癌部腸上皮細胞の細胞質に発現を認めた。CHI3L1を発現している癌上皮細胞と間質細胞との関係を検討するため、vWFにて血管内皮を染色したところ、CHI3L1の発現が強い臨床検体ほど微小血管密度が高い傾向にあった。またCD68にてマクロファージを染色したところ、CHI3L1の発現が強い臨床検体ほどマクロファージの浸潤が強い傾向にあった。 2。ヒト大腸癌細胞株を用いた研究 作製したCHI3L1発現ベクターとCHI3L1ノックダウンベクターを用いて、臨床検体で得られた結果について細胞株を用いて検討した。Boyden chamber法を用い、下層にヒト大腸癌細胞株SW480を上層にヒト血管内皮細胞HUVECを共培養し遊走能を検討したところ、SW480にCHI3L1を強制発現したものでは遊走能が著明に亢進した。またSW480にCHI3L1をノックダウンしたものでは遊走能が低下した。Tube formation assayにてHUVECの血管新生能を検討したところSW480にCHI3L1を強制発現したものでは著明に亢進し、ノックダウンしたものでは低下した。また上層にヒトマクロファージ細胞THP-1を共培養し遊走能を検討したところ、SW480にCHI3L1を強制発現したものでは著明に亢進し、ノックダウンしたものでは低下した。
|