研究概要 |
本研究の目的は、アフリカ熱帯雨林、とくにカメルーン東南部の熱帯雨林帯でおこなわれている焼畑農耕の生態基盤に焦点をあてながら、マクロな政治・経済状況がその生態基盤にどのような影響を及ぼしているのかということについて、近年、調査地域において現金収入源として拡大しつつあるカカオ栽培の事例をもとに明らかにすることである。 本年度は、これまでの調査結果をもとにデータ分析、及び文献研究を進め、その成果として『森棲みの生態誌-アフリカ熱帯林の人・自然・歴史I(木村大治・北西功一編,京都大学出版会より刊行)』において「バナナとカカオのおいしい関係-カメルーン東南部の熱帯雨林における焼畑農耕の現代的展開」のタイトルで論文を発表した。論文においては、調査地域であるカメルーン東南部の熱帯雨林に暮らす焼畑農耕民バンガンドゥを対象に、生業経済(バナナ栽培を中心とする焼畑)の特徴、及び市場経済(カカオ栽培)の導入による生業経済の変容を説明し、市場経済化の影響に対応しながら安定した食料生産を維持する戦略について議論をおこなった。今後は、カカオ栽培の導入が森林に及ぼす影響について検討するために、カカオ栽培の導入によって新たに形成されつつある森林景観「カカオ・アグロフォレスト」の構造や、その創出過程について明らかにするとともに、このような森林景観がカカオ栽培の消長と連動してどのように変化しているのか、カカオ経済に関わる政治・経済的な背景と照合しながら明らかにしていきたいと考えている。
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