ATMとTERTのダブルノックアウトマウスを用いて、造血幹細胞における両分子によるストレス応答と老化の分子機構を解析した。ATM・TERTダブルノックアウトマウスでは寿命の短縮や各臓器の老化増進が認められ、また造血組織および造血幹細胞においても老化形質が著しく進行していた。TERTはATM欠損下で造血幹細胞の長期再構築能を維持制御していることを示し、ATM・TERTダブルノックアウトマウスで見られた老化増進は幹細胞機能の低下に起因すると考えた。その制御機構として、TERT欠損によるテロメア長短縮やテロメア機能不全は認められなかった。ATM・TERTダブルノックアウトマウス造血幹細胞ではアポトーシスが増加していたため、TERTは造血幹細胞をATM欠損によるROS蓄積で惹起されるアポトーシスから防御していると推測し、これを証明した。このアポトーシス制御機構にはp38MAPKが一部関与していること、またTERTによりBCL-2の発現維持がなされていることを示し、造血幹細胞のアポトーシス制御にもBCL-2が関与している可能性を示唆した。ATMはROS以外にもDNAダメージなど様々なストレスを制御しており、TERTはこれらの様々なストレスから造血幹細胞を防御している可能性がある。これらの結果より、ATMおよびTERTが造血幹細胞のストレス制御を行い個体レベルの寿命にまで影響を与え得ることを示唆した。 これらの結果をまとめ、現在論文投稿中である。
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