研究課題/領域番号 |
09J40083
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
仁田 英里子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 老化 / 幹細胞 / 酸化ストレス / ATM / TERT / 白血病 / アポトーシス |
研究概要 |
ATMとTERTのダブルノックアウトマウスを用いて、造血幹細胞における両分子によるストレス応答と老化の分子機構を解析した。ATM・TERTダブルノックアウトマウスでは寿命の短縮や各臓器の老化増進が認められ、また造血組織および造血幹細胞においても老化形質が著しく進行していた。TERTはATM欠損下で造血幹細胞の長期再構築能を維持制御していることを示し、ATM・TERTダブルノックアウトマウスで見られた老化増進は幹細胞機能の低下に起因すると考えた。その制御機構として、TERT欠損によるテロメア長短縮やテロメア機能不全は認められなかった。ATM・TERTダブルノックアウトマウス造血幹細胞ではアポトーシスが増加していたため、TERTは造血幹細胞をATM欠損によるROS蓄積で惹起されるアポトーシスから防御していると推測し、これを証明した。このアポトーシス制御機構にはp38MAPKが一部関与していること、またTERTによりBCL-2め発現維持がなされていることを示し、造血幹細胞のアポトーシス制御にもBCL-2が関与している可能性を示唆した。ATMはROS以外にもDNAダメージなど様々なストレスを制御しており、TERTはこれらの様々なストレスから造血幹細胞を防御している可能性がある。これらの結果より、ATMおよびTERTが造血幹細胞のストレス制御を行い個体レベルの寿命にまで影響を与え得ることを示唆した。我々はこれらの結果を論文としてまとめ、Blood誌にPlenary paperとして採択・掲載された。(13.研究発表[雑誌論文]番号1)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、今まで解析を進めてきたATMとTERTのダブルノックアウトマウスの造血幹細胞における制御機構の研究を進め、ATMとTERTの協調機構を解明して論文としてまとめ、雑誌BloodにPlenary paperとして採用されるに至った。当初目標としていた雑誌掲載を達成したので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
TERTによる造血幹細胞の老化制御機構を発展させるため、老齢の野生型およびTERTノックアウトマウスの造血幹細胞を回収し、Real-timePCRアレイを用いて遺伝子発現の網羅的解析を行ったが、その結果予測以上の個体差にぶり、真にTERTによる制御を受ける分子を解析データから抽出することが困難であったため、現在、実験系の見直しを行っている。 一方、老化に関わらずTERTが関与する造血幹細胞の制御機構に発展させるため、TERTと複合体を形成する因子による造血幹細胞の維持制御機構を解明するため、造血幹細胞で標的分子のノックダウンを行い幹細胞機能を評価する系を構築し、解析を進めている。
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