本研究は絶滅危惧種であるタナゴ類の保全と復活を目的とし、発生工学的手法を用いて対象種の生殖細胞を他魚種の生殖巣で生産するシステムを開発することを目指している。これまでに、対象種であるニッポンバラタナゴの始原生殖細胞(PGCs)を可視化し、その動態を人工培養下で観察することを可能とした。この可視化したPGCsを不妊化を施したゼブラフィッシュやキンギョに移植し、生殖系列キメラを作出したが、いづれのキメラにおいてもニッポンバラタナゴの配偶子は形成されていなかった。そこで、ニッポンバラタナゴに近縁なタイリクバラタナゴをホストとするために不妊化の条件を検討し、されに生殖系列キメラ作出を行った。 1.タイリクバラタナゴの不妊化 本種のdnd遺伝子に対するモルフォリノオリゴを用いて不妊化を施した個体の生殖腺を組織学的に調べたところ、20日齢の稚魚(浮上時)の生殖腺が対象魚と異なり未発達であった。このことから、本手法により不妊化を誘導できると考えられた。 2.タイリクバラタナゴを宿主とした生殖系列キメラ作出 胞胚期のタイリクバラタナゴの不妊化胚に蛍光ラベルしたニッポンバラタナゴのPGCを移植しキメラ胚を誘導した。移植したPGCは移動ルート上を自立的に移動していることが観察されたが、いづれのキメラ胚も正常に発生しなかった。これは従来の胚操作や培養方法がタイリクバラタナゴ胚に適していないことが考えられた。
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