研究概要 |
近年,メタボリック症候群の予防・改善とともに,高齢者の介護予防が重要視されている.一般に,メタボリック症候群は40歳代以降において発症率が高まり,65歳以上になると要介護状態になる可能性が高まる(高齢社会白書より)と考えられている.すなわち,メタボリック症候群と要介護状態とが同時に発生する可能性は非常に高く,両者の予防・改善に有効となる方法を考案することは,今後の社会において重要な検討課題である.そこで本研究では,内臓脂肪が体幹部に特異的に蓄積する組織であり,この身体セグメントを対象とする運動が,必然的に内臓脂肪へと刺激を与えることになる点に着目し,体幹部を対象とした運動プログラムの実施がメタボリック症候群の改善ならびに介護予防に有効であるか否かを検討することを目的とした.当該年度(実質5ヶ月間)は,介護予防の観点から,二重エネルギーX線吸収(DXA)法による骨格筋の加齢変化(サルコペニア)の観察が可能か否かを検討した.19~84歳までの男女947名(男性340名,女性607名)を対象に,全身骨格筋量を測定し,先行研究(Baumgartner et al. 1998, Janssen et al. 2002)を参考に,骨格筋指数(骨格筋量/身長^2)を算出した.さらに,18-40歳におけるSMIの平均値マイナス2SDをサルコペニア参照値,平均値マイナス1SDをサルコペニア予備群の参照値とした.その結果,サルコペニアおよびその予備群の該当者の体力要素(握力および脚伸展パワー)は非該当者のそれよりも有意に低い値を示した.また,41歳以上の被験者を対象とした場合に,全身SMIと年齢の間に有意な負の相関が認められた(男性:r=-0.262,女性:r=-0.127,いずれもp<0.05).以上の結果から,今後,DXA法による骨格筋量測定を同一被験者に対して継続的に実施することにより,骨格筋の加齢変化について定量できるとともに,介護予防において必要となるSMIを提案できる可能性が示唆された.
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