研究概要 |
最終年度にあたる本年度は,実験2【内臓脂肪量と体幹部骨格筋量との関係(縦断的検討)】が終了したので,ここに報告する. 【目的】1年間の運動介入によって生じた内臓脂肪および腹部骨格筋横断面積の変化,および両者の関係について検討することであった. 【方法】被験者は,長野県佐久総合病院における人間ドッグ受診者のうち,年齢:40~64歳体格指数(BMI):30kg/m^2以上の男女230名であった.彼らを無作為に運動介入群(男性57名,女性58名)と対照群(男性59名,女性43名)へと分類した.プログラム開始前および後に,身長,体重,腹囲,腹部CT画像の撮影を行った.運動群には1日1時間以上の歩行ならびに3Mets以上の身体活動の実施を促し,定期的に健康運動指導士による指導を受けさせた.介入前後における腹部CT画像より,腹直筋,腹斜筋群,脊柱起立筋群,腸腰筋群,内臓脂肪の横断面積(CSA)を定量した. 【主な結果】1年後測定の結果,男女ともに,運動介入群においてのみ,体重,BMIおよび内臓脂肪CSAの有意な低下が認められた.同様に,男女とも運動介入群における各骨格筋群のCSA絶対値が有意に低下したものの,骨格筋CSAを体重2/3で補正した値には有意な変化は認められなかった.一方,男性では腹斜筋群,女性では腹斜筋群および脊柱起立筋群における各変化率が,内臓脂肪CSAの変化率と有意な正の相関を示した.本研究における内臓脂肪CSAの変化はマイナス方向であることから,この結果は,運動介入による内臓脂肪の減少により低下しやすい骨格筋群が存在することを示唆している. 【まとめ】本研究により,内臓脂肪の減少に伴い筋量が低下しやすい骨格筋群が存在することが示された.内臓脂肪の減少を目的とした介入プログラムを実施する場合には,骨格筋量の維持・増進を意識しないと,サルコペニアを誘発する可能性があるものと考えられる.
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